
不安や恐怖の感情をコントロールする実践的な3つの方法についてご紹介致します。
私たちの不安や恐怖は、実は脳が作り出した創作物だということをご存知でしょうか。これは重要な発見です。なぜなら、脳のメカニズムを理解して逆に利用すれば、不安や恐怖を制御できる可能性があるということだからです。
まず、大切な事実からお話ししましょう。私たちは実は、この世界を直接見ることはできません。あなたが今見ているこの世界は、脳内のスクリーンに映し出されたバーチャルリアリティなのです。認知科学では、この脳内スクリーンのことを「内部表現」と呼んでいます。
この内部表現は、外からの刺激と、あなたの過去の記憶を材料にして、あなただけの現実世界を作り出します。同じ出来事でも、人によって受け止め方が違うのは、まさにこの理由によるものです。つまり、内部表現はあなただけの特別な色眼鏡なのです。
あなたの内部表現は、視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚という五感からの刺激を、過去の記憶という物差しで測り、意味づけしています。そうして独自の現実世界を投影しているのです。
例えば、こんな例を考えてみましょう。ある人が過去にカラオケで恥ずかしい思いをしたとします。その結果、その人は「歌って」と言われただけで、条件反射的に不安や恐怖を感じてしまいます。これは、その人の内部表現がそのような世界を作り出し、意識がそれを見ているからなのです。
重要なのは、この内部表現は書き換えが可能だという点です。ただし、同じ刺激に同じ解釈を繰り返すほど、その条件反射は強化されていくという特徴もあります。
では、不安や恐怖を消すための具体的な方法を、3つのステップでご説明します。
ステップ1:体を使って五感をコントロールする
私たちの脳は、臨場感の強い五感からの情報と記憶を優先して内部表現を作ります。つまり、恐怖や不安の臨場感を減らし、楽しい・嬉しい・誇らしい感覚の臨場感を増やすことで、恐怖や不安を薄め、より前向きな性格に更新することができます。
具体的な実践方法として、姿勢の調整が効果的です。姿勢は全身を使った五感表現であり、強い臨場感をもたらします。例えば、笑顔の時に怒りを感じることは難しいですよね。
人は不安や恐怖を感じると、上半身が固まり、下半身がふらつく傾向があります。この姿勢自体が、さらなる不安や恐怖の臨場感を高める刺激となってしまいます。
そこで、不安や恐怖を感じた時は、以下の姿勢にすぐに切り替えましょう:
- 頭が天井に引っ張られているように、背筋をまっすぐ伸ばす
- 丹田に手を置いて意識を向ける
背筋を伸ばすことで、不安や恐怖の感覚が和らぎます。また、丹田に手を当てることで、下半身が安定し、上半身の緊張が解けていきます。
ステップ2:時間の流れを「未来→現在→過去」と捉える
多くの人が過去の記憶に強くとらわれているのは、時間の流れを「過去→現在→未来」と教わってきたからです。しかし、実は時間の真の流れは「未来→現在→過去」なのです。
その証拠に、今このときあなたがしていることは、未来のあなたが決めたことの結果です。例えば、あなたが今食事をしているとすれば、それは未来に食事をすると決めたから、食材を買い、調理し、食べているのです。
また、過去の出来事は、今この瞬間もどんどんあなたから遠ざかっています。つまり、過去よりも未来に臨場感を持つ方が、より自然で健全なあり方なのです。
ステップ3:望む未来をイメージする習慣をつける
不安や恐怖を感じやすい人の多くは、過去の記憶に強くとらわれ、それを繰り返しイメージすることを習慣にしています。しかし、時間の流れが「未来→現在→過去」だと理解したあなたは、未来に臨場感を持つことがより合理的だと気づいたはずです。
そこで、未来の記憶を作っていきましょう。未来の記憶は自由に作れます。あなたにとって望ましい未来を、好きなようにイメージすればよいのです。
ただし、意識が鮮明な時は、疑いの気持ちが強くなり、未来のイメージに臨場感を持ちにくくなります。そのため、入浴中や睡眠前など、頭がふんわりとしたトランス状態の時を狙いましょう。この状態では、思考という疑いのセキュリティがオフになりやすく、イメージが脳内にスムーズに入っていきます。
入浴と睡眠は毎日のことなので、未来イメージを習慣化するのに最適です。
まとめ
今のあなたを作っているのは、記憶です。恐怖や不安で毎日が苦しい人と、ワクワクして毎日が楽しい人の違いは、どちらの記憶に強い臨場感を持っているかの違いだけです。
つまり、不安を生む臨場感を弱め、ワクワクする臨場感を強めることで、私たちの性格や人格は更新可能なのです。今のあなたは過去のあなたではなく、未来のあなたが決めているのです。この点を理解すれば、感情は自由自在にコントロールできるようになります。