ケニアで150万年前の貴重な足跡が発見され、猿人(アウストラロピテクス)と原人(ホモ・エレクトス)が同時期に生息していたことを示唆しています。この発見は、古代人類の進化や生活様式に関する理解を深める重要な手がかりとなっています。
足跡発見の概要
考古学者たちは、ケニアの乾燥地帯で保存状態の良い足跡群を発見しました。この足跡は、2種類の人類が同時期に存在し、異なる役割を果たしながら共存していた可能性を示唆しています。猿人の足跡は小さく、軽快な歩行スタイルを持ち、原人の足跡はより大きく、現代の人類に近い形状でした。
アフリカ・ケニア北部、トゥルカナ湖沿岸の約150万年前の地層から、同時期に残ったとみられる猿人と原人の足跡を発見したと、米チャタム大やストーニーブルック大などの国際研究チームが29日付の米科学誌サイエンスに発表した。 異なる種の古人類がどのように共存して暮らしていたかを探る貴重な手掛かりだという。
連続した足取りが分かる足跡のほか、脇に点在する足跡があり、それぞれ猿人の「パラントロプス・ボイセイ」と、より進化した原人の「ホモ・エレクトス」が残したと推定された。 他の場所で見つかっている頭骨や骨格の化石から、ボイセイは小柄でも頑丈な顎で植物の茎や根、堅い実などを食べていたとみられる。一方、エレクトスは現生人類(ホモ・サピエンス)と同属で、直立二足歩行を確立し、その後の時代に欧州やアジアに進出したと考えられている。
人類の進化
人類の祖先に、どのような進化的変化が起きたかは、幅広い科学的探求の主題である。この研究は多くの分野、特に形質人類学、言語学、遺伝学、考古学などと関連している。
なお、「人類」という用語は人類の進化の文脈ではヒト科ヒト亜科ヒト族ヒト亜族ヒト属生物に対して用いられるが、他の属(アウストラロピテクス属など)を含むヒト亜族生物を指す場合もある。本記事では、人類という用語をチンパンジー亜族と分岐し直立二足歩行していたヒト亜族生物に用い、脳の発達したヒト属生物については学名で表記し、特にヒト属生物のうちホモ・サピエンス・サピエンスについては現生人類と表記する。
ヒト属(ホモ属)はおよそ200万年前にアフリカでアウストラロピテクス属から別属として分化し、ヒトの属するホモ・サピエンスは40万から25万年前に現れた。またこれらの他にも、すでに絶滅したヒト属の種が幾つか確認されている。その中にはアジアに生息したホモ・エレクトゥスや、ヨーロッパに生息したホモ・ネアンデルターレンシスが含まれる。
ホモ・サピエンスの進化と拡散については、アフリカ単一起源説と多地域進化説とが対立している(#人類進化のモデル)。アフリカ単一起源説では、アフリカで「最も近いアフリカの共通祖先 (RAO)」であるホモ・サピエンスが進化し、世界中に拡散してホモ・エレクトゥスとホモ・ネアンデルターレンシスに置き換わったとしている。多地域進化説を支持している科学者は世界中に分散した単一のヒト属、おそらくホモ・エレクトゥスが各地でそれぞれホモ・サピエンスに進化したと考えている。
化石の証拠はこの分野における激しい議論を解決するのに十分ではない。人類はホモ・ハビリスの頃から石器を使い始め、次第に洗練させてきた。およそ5万年前を境に現生人類の技術と文化は変わり始め、現代的行動がとられるようになった。
猿人と原人の足跡が示す同時期の生活 歴史的意義
この発見は、人類進化の複雑さを浮き彫りにしています。従来、猿人と原人は異なる時代に存在すると考えられていましたが、今回の証拠はそれを覆し、二つのグループが同じ地域で同時期に活動していた可能性を示しています。
発見のインパクト 考古学の新たな発見が歴史を塗り替える可能性
この足跡は、当時の環境や気候、さらに人類の行動や食生活について新たな洞察を提供します。また、技術的進化や文化的交流の可能性についても議論を深めるきっかけとなっています。