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強力なトップダウン経営が生んだ「ミッド・ナイト・トレイン」
2012年に火星移住計画は100万人規模と打ち出した、スペースXの創業者兼CEOのイーロン・マスク氏のビジネスはハードワークだ。
いまや世界を代表する起業家イーロン・マスク。持続可能エネルギーを原動力にした社会の実現や火星移住計画など、規格外のビジョンが注目を集めるが、一方で彼のマネジメントにはなかなかスポットライトが当たらない。
そんな「社内のイーロン」と密に接して来た日本人がいる。テスラモーターズで4年余り働き、現在はホンダなどと協同し、シリコンバレーで最も注目される日本のスタートアップとも評されるドライブモードの共同創業者・上田北斗だ。
2017年10月19日、一般社団法人「at Will Work」主催、ForbesJAPANと協同で次世代の働き方を模索する雑誌「WORK MILL」を創刊した岡村製作所の後援で、シリコンバレーから久方ぶりに帰国した上田と、早稲田大学ビジネススクール准教授 入山章栄の特別対談が実現。社内マネジメントを通して窺える、もう一つのイーロン・マスクの貌を2回に渡って掲載する。
第1回で紹介するのは、あまりに徹底したトップダウンを行うイーロンの姿だ。
入社日に突然、「4カ月で工場を作れ」と言い渡された
入山:イーロン・マスクの第一印象はどうでしたか。
上田:初めて会ったとき、イーロンはスマイルがなく、無愛想な人だと感じましたね。ハーバードビジネススクールを卒業して2011年5月末にテスラへ正式に入社したんですが、その初日にイーロンから「工場を作ってくれ。10月1日のオープンパーティの招待状を3000人に送ったから」と言い渡されたんです。
入山:えっ!?たったの4カ月で工場を?
上田:でも工場で働いたこともないから、4カ月で工場を作るのが難しいのかどうかもよくわからなくて。とりあえず「Yes. No Problem.」と答えたんです。何が難しいのからすら、当時の僕にはよくわかりませんでした。
休止していた元トヨタの工場を、4カ月で新たな工場に作り変えたんです。テスラでは場が人の行動を変えるという考え方を採用していました。従来の工場っぽくない綺麗な場所で働けば、それにつられて従業員の士気も上がるということですね。
入山:日本でも「働き方改革」でオフィスを綺麗にしようと言われるけど、実際は事務スタッフの部屋やバックオフィスにコーヒーメーカーをつけるといったことばかり。工場を綺麗にすべきというのは、たしかにその通りですよね。結局、4カ月で完成したんですか?
上田: 完成しました! オープン当日にドアのペンキを塗るくらいにギリギリでしたけど。写真は最終品質をチェックの場所ですが、ちょっと段差を高くしてスポットライトを当ててステージのようなつくりにしています。これがイーロンのこだわりです。正直、面倒臭かったですね(笑)。
ただ、4カ月でできたのはあくまで工場の見てくれだけ。その後は内部の稼働準備に移りました。それから「モデルS」のプロトタイプの製作を一年くらい任されて、2012年6月にローンチしました。
入山:2011年5月末にモデルSを作るための工場を作り始めたんですよね。たったの1年で製品をローンチ。すごいスケジュール感ですね。
強力なトップダウン経営が生んだ「ミッド・ナイト・トレイン」
入山:テスラにいたのは2015年半ばまでの4年間ですよね。この期間には何をやったのですか?
上田:工場立ち上げからモデルSのローンチやデュアルモーターという四駆のローンチ、モデルXの開発に少し関わって、それからギガファクトリーという世界最大級のバッテリー工場をネバダに立ち上げました。ほかにはないプロジェクトばかりで、めちゃくちゃ楽しかったです。
入山:ニュースに出ているようなテスラの主だった仕事のすべてに関わったということですね。ではちょっとミーハーな質問ですが、イーロン・マスクはどんな人でしたか?
上田:すぐクビにするという意味では、すごく怖い人ですね。週一でミーティングをしていましたが、そのあと人が消えるということもしょっちゅうでした。
入山:なんでもテスラ独自の言葉があるのだとか?
上田:突然のクビという意味で、「ミッド・ナイト・トレイン」という言葉が社内で飛び交ったこともありました。ヘマをした人が、会議をした夜中の列車で連れ去られて消えると、「最近アイツ見ないね」「ミッド・ナイト・トレインされたんだ!」って。
イーロンはそういう意味では怖い人ですが、必要な恐怖だったと思っています。要するに彼は、ある分野に特化した人じゃなければ雇わないんです。だからイーロンより知識がない人をクビにして、さらに知識がある人を雇うんです。
入山:彼はめちゃくちゃ勉強していると聞いたことがあります。
上田:その通りです。機械のことなら細部まで知っている。だから、適当なことを言うとすぐに指摘されて、「ミッド・ナイト・トレイン」。結果として、特定のジャンルを極めた人か、僕のように何も知らないけどそのぶん死に物狂いでやり遂げる人が生き延びるんです。
入山:なるほど。では、上田さんはイーロンとの仲は良かったんですか?
上田:プライベートな会話はほとんどなかったですね。正直、ミーティングで報告したらなるべく早めに帰るようにしていました。僕の知る限り、イーロンは社内ではほとんど誰とも仲良くしていませんでしたね。
入山:孤高の経営者だった。
上田:そうですね。近づきがたい雰囲気でした。
会場:強力なトップダウン式だというのはわかりましたが、現場の権限はどこまで与えられたんですか?
上田:初期と今では違うかもしれないけど、僕がいた頃には2万ドルの機械が必要だと伝えると、「俺に尋ねる時間がもったいないから早くやれ」と突き返されました。一人一人を専門家として雇っているから、「お前が良いと思うなら早くやれ」という考え方。
イーロンは怖いけど、理不尽ではないと思っています。「そのやり方は違う」とちゃんと反論すれば納得して応えてくれます。
入山:彼はどんなときに怒るんですか?
上田:モデルSのプロトタイプをシリコンバレーからLAにいるイーロンに送ったのですが、12時間後に電話で「飛行機に乗って今すぐ来い」と呼ばれて。スペースXの横にある空港のポート横にプロトタイプがあって、その横にマスクがいるのですが、飛行機の中からでも彼が怒っているのがわかるんです。
出会ったら2時間くらい怒られて、「すぐに直せ」と飛行機で送り返されて。怒られるためだけに飛行機に乗ったのはそれが初めてでしたね(笑)。
彼は、怒るときはとにかく怒るんです。ボディのラインが気に入らなかったらしくて、客に受け渡す1カ月前に金型から直さなきゃならないのに「絶対やれ」と。
入山:日本の前例主義の逆ですね。日本では前例にならっているかを気にすることが多いですが、テスラでは前と同じことをやったら怒られるんですね。
Yahoo!ニュースより引用
「スペースXの人工衛星は天文学へ影響しない」とイーロン・マスクは言うが、天文学者は打ち上げの停止を要求している
イーロン・マスクのSpaceXは、スターリンク計画で数万基の人工衛星を宇宙に打ち上げようとしている。
スターリンクの目標は、この衛星群で世界中のユーザーに高速インターネットを提供することだ。
天文学者は、衛星群が天文研究に被害を与えかねないと懸念を表明している。
マスクは3月9日、スターリンクは「天文学的な発見にはまったく影響を与えないと確信している」と述べた。
ヨーロッパ南天天文台による最近の研究は、これが事実ではないことを示唆している。
3月9日、イーロン・マスク(Elon Musk)は、最大4万2000基の衛星を軌道に打ち上げるという彼の計画が天文学の研究に損害を与えるかもしれないという天文学者からの懸念に言及した。
ワシントンDCで行われたサテライト2020カンファレンスでのインタビューで、その懸念について聞かれたマスクは、「天文学的な発見にはまったく影響を与えないと確信している。それが私の予想だが、少しでも影響がある場合には修正処置を行う」と答えた。
スペースX(SpaceX)のスターリンク(Starlink)計画は、2019年から人工衛星を打ち上げており、すでに300基近い人工衛星が軌道上にある。まもなく、アメリカ天文協会は商業衛星の大量打ち上げが天文学研究に悪影響を及ぼす可能性があると警告する声明を発表し、天文学者たちはすぐに、観測データに明るい筋を残しているスターリンク衛星を見つけ始めた。
マスクによると、懸念の一部は、意図した軌道より少し下にある衛星によるものかもしれないという。
「一部の人は、衛星が最初に打ち上げられたときには、少し回転していて安定していないために不規則に光ったり、想定よりまだ低い軌道にあるために正しい軌道とは違った形で反射するから、少しエキサイトしている。衛星が正しい軌道に乗っている今、すべての衛星がどこにあるかを誰かが教えてくれれば、私は感心するだろう」と、彼は言いました。
「すべての衛星がどこにあるのか教えてくれる人には会ったことがない。一人も。そんなに大したことではないのだ」と彼は付け加えた。
ヨーロッパ南天天文台が発表した論文によると、チリにある最新鋭のヴェラ・C・ルービン天文台(以前は大型シノプティック・サーベイ望遠鏡、LSST:Large Synoptic Survey Telescopeとして知られていた)のような大型の高性能望遠鏡は、夜空の大量の商用衛星によって「ひどい影響を受ける」ことを示唆する証拠が見つかった。
マスクは続けて、スペースXが自社の衛星の反射率を下げる方法について科学者と取り組んでおり、どのようなアイデアを検討しているかについてを明かした。
「フェーズドアレイ・アンテナを白ではなく黒に塗装する実験を行ってる」と、彼は言った。
スペースXは今年1月、衛星の明るさを抑えるためにダークコーティングする実験を行っていると発表したが、専門家は以前、Business Insiderに対して、これは複雑な作業であり、天体観測に生じる問題を必ずしも解決するものではないと述べていた。
ある専門家は、スペースXは衛星打ち上げを完全に停止すべきだと述べた。
インペリアル・カレッジ・ロンドンの天文学者、デイブ・クレメンツ(Dave Clements)博士はBusiness Insiderに、「要するに、これらの対策に真剣に取り組むのであれば、これらの対策が完全に機能することが証明されるまで、衛星の打ち上げを中止すべきだ」と語った。
クレメンツ博士によると、マスクは、スターリンク衛星が電波望遠鏡を見えなくしてしまうのではないかという、天文学者たちの懸念には答えていないという。
「衛星は地上と通信するものであり、これらの通信は必然的に電波天文学の活動を妨害することになる。彼が挙げた緩和策はどれもこれを変えるものではない」とクレメンツ博士は述べている。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200315-00000001-binsider-int
スペースXの「衛星インターネット」、年内に北米で始動へ
イーロン・マスクが設立したスペースXは、「スターリンク」と呼ばれる衛星コンステレーション(衛星の群れ)で、衛星インターネット網を構築し、地球上の全てのエリアにネット接続を提供しようとしている。
一部の天文学者たちは、これらの衛星の群れが宇宙観測の妨げになると危惧しているが、マスクはその考えを否定した。3月9日、ワシントンDCで開催された2020 Satellite Conferenceの会場で彼は、スペースXが天文学者が懸念する事態への対処を進めていると述べた。
「当社のチームは天文学コミュニティからの懸念の払拭に向けて、全力を尽くしている。衛星の群れは天体観測に一切影響を及ぼさないと確信している」と彼は話した。
マスクによるとスペースXは、衛星のフェイズドアレイアンテナを白ではなく黒い塗料で着色する実験を進めているという。同社は今年の年初に打ち上げた衛星の底部を、太陽光の反射を最小限に抑えるために黒く塗っていた 。
マスクはさらに、衛星にサンシェードを取りつける試みも始動させたという。これにより、衛星の色が変化することになるという。スペースXは今後、最大で4万2000基の小型衛星を宇宙に放出し、地球を覆うコンスタレーションを構築する計画だ。現状でアクティブな軌道上の衛星の数は、2000基程度とされている。
同社が既に打ち上げた衛星の数は300基に達し、2020年の終わりまでにさらに1000基以上を打ち上げる。しかし、関係者の多くが今後、衛星同士が衝突する危険を指摘しており、既存の衛星よりも輝度が99%も高いスペースXの衛星がもたらす「光害」を問題視している。
昨年11月には2人の天文学者が、スターリンクによって天体望遠鏡による観測が妨害されたと報告した。ヨーロッパ南天天文台(ESO)の科学者らも先週、スターリンクが今後の宇宙研究の妨げになると指摘していた。
今回のイベントでマスクは、以前から噂されている、スターリンクの分社化計画が事実ではないことも指摘した。スペースXは将来的に人類を火星に送り込む計画で、スターリンクの事業から得た収益は、そのミッションに投資する予定だとマスクは話した。
スターリンクによる衛星インターネット接続サービスは、今年後半に米国とカナダで利用可能になる見通しで、グローバル展開に向けた準備も進んでいる。ただし、サービスの利用料金についてはまだ明かされていない。
衛星インターネット分野でスターリンクの競合となる企業としてはアマゾンや、ソフトバンクが支援するOneWebなどがあげられる。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200311-00032886-forbes-sci