この宇宙に「なぜ私たちが存在しているのか?」
実は、現代の物理学でも解明できていない究極の謎です。先日の投稿の通り、
ビッグバンは「2回」あった?ダークマター「暗黒ビッグバン」が提唱される という新たな説もあります。2011年9月23日CERNで、観測したニュートリノが光速より速かったという実験結果が発表されました。ニュートリノとは、イタリア語で「電気を帯びていない+小さい」という意味の名前を持った、素粒子のひとつです。 素粒子とは、物質を究極までバラバラにすると現れる要素です。
私たちの体、地球、そして太陽や銀河。これらは全て「物質」でできていますが、宇宙が誕生したときには「物質」とともに、“物質を鏡に写したような”真逆の性質を持つ「反物質」が同じ数だけ生まれたとされています。この「物質」と「反物質」は互いにぶつかると、光になって「消滅」してしまう性質があるため、本来なら現在の宇宙には何も残っていないはずなのです。
ところが、宇宙には物質でできた私たちは確かに存在する一方、反物質の存在はほとんど観測できていません。 この究極の謎に挑むため、「CP対称性の破れ」、つまり物質と反物質の違いを実証しようという大規模な実験が、日本で行われています。
物質と反物質の性質の違いを発見できれば、「物質が宇宙に存在できること」を説明できるかもしれない。そう考えて実験の対象とされたのは素粒子「ニュートリノ」です。加速器で人工的に作り出した「ニュートリノ」と「反ニュートリノ」を、300km離れたスーパーカミオカンデで詳しく観測し、物質と反物質の性質の違いを見いだそうとしているのです。
「私たちの存在の謎」を解くカギに手が届くところまで来た20年
「T2K実験」と名付けられたこの実験は、「95%の確からしさ」で物質と反物質の違いを捉えたことを発表し、世界的に大きなインパクトを与えました。国内外500人以上の研究者が参加するこのビッグプロジェクトを束ねるのが、東北大学大学院理学研究科教授の市川温子さんです。
「なぜ宇宙には物質が存在しているのか?」実は現代の物理学でも説明できない究極の謎だった…素粒子実験の第一人者が語る「ニュートリノがなければ人類も誕生できなかった」という不思議(現代ビジネス) – Yahoo!ニュース
ニュートリノというのは、私たちの周りの空間にも飛び交っているものすごく小さい粒子で、たとえば手のひらの表面を毎秒数兆個のニュートリノが通り過ぎています。実は、このニュートリノは「ニュートリノ振動」(※1)といって3種類の状態を変化させながら飛んでいるということが分かっています。 そこで具体的には、茨城県東海村にある加速器で「ミューニュートリノ」という状態のニュートリノと、その反物質である「反ミューニュートリノ」を作り出して、岐阜県の神岡町にある「スーパーカミオカンデ」というニュートリノ検出装置で観測しています。ニュートリノ振動によって、それぞれ「電子ニュートリノ」「反電子ニュートリノ」に変化するのですが、その割合を比較しています。これが東海(Tokai)と神岡(Kamioka)からとって「T2K実験」と呼ばれる実験です。
Yahooニュース
「CP対称性の破れ」とは?
CP対称性の破れ(CPたいしょうせいのやぶれ、英:CP violation、CP-symmetry、charge conjugation parity symmetry)とは、物理学、特に素粒子物理学において、CP対称性に従わない事象のことである。 CP対称性の破れは1964年に中性K中間子の崩壊の観測から発見され、ジェイムズ・クローニンとヴァル・フィッチはその功績により1980年にノーベル物理学賞を受賞した。現在も、理論物理及び実験物理で積極的な研究が行なわれている分野の一つとなっている。 現在の宇宙では、物質が反物質よりもはるかに多い。 宇宙の歴史の中でこの非対称性を生成するためにはCP対称性の破れが必要条件であり、サハロフの三条件のひとつとして知られている。
Wikipedia
深まるCP対称性の破れ
「CP対称性の破れ」は、ひとつの物理現象とそれを「CP反転」させた現象の間に違いがあることを意味しています。「CP反転」は物質を反物質に変える役目をするので、その破れは物質と反物質の振舞に違いを引き起こします。
これは小さい効果ですが確実に存在することがこれまでの観測でわかっていました。Belleグループが発表した新結果は、電気的に中性なBゼロ中間子がふたつの反対の電荷を持ったπ中間子に崩壊する過程(B0 → π+π–)と、そのCP反転された過程(反B0 → π+π–)の比較に関するものでした。
Bゼロ中間子は反bクォークとdクォークからできています。これに対して、その反粒子である反Bゼロ中間子はbクォークと反dクォークから出来ています。今回の実験で調べられたパイ中間子では、π+中間子はuクォークと反dクォーク、π–中間子は反uクォークとdクォークからそれぞれ出来ていて、一方が他方の反粒子に対応しています。
研究者がこの小さな破れにこだわる理由は、なぜ宇宙には物質と反物質が同じ数だけあるのではなく、物質だけが主に存在するのかという謎を解く鍵がそこにあるかもしれないからです。
深まるCP対称性の破れ
「T2K実験」とは?
ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校、物理天文学科長で特別教授のチャンキー・ジュン教授が2022年アメリカ物理学会ユリウス・エドガー・リリエンフェルト賞を受賞しました。T2K実験の元共同スポークスマンでもあるジュン教授のニュートリノ実験物理学における多大な貢献とスポーツ物理学に対する教育的な貢献が評価されました。ジュン教授は1990年代にニューヨーク州立大学ストーニーブルック校にニュートリノグループを立ち上げ、それ以来スーパーカミオカンデ、K2K、T2Kを含むのニュートリノ実験で重要な役割を果たして来ました。
The T2K Experiment
K2Kニュートリノ振動実験
つくば市にあるKEKの陽子加速器によって生成されたニュートリノを、250キロ離れたスーパーカミオカンデに打ち込むという世界初の長基線ニュートリノ振動実験で、1999年から2004年にかけて行われました。この間に得られた112個の人工ニュートリノ事象の解析から、ニュートリノ振動が起こっている確率は99.9985%という確定的な結果が得られました。
【特集】ニュートリノ振動を精密に測定し、宇宙生成の謎に迫るT2K実験〜ニュートリノグループの取り組み – 素核研