「タイムトラベル」についての論文を書いた理論物理学者キップ・ソーン「アインシュタインの宿題」も解いた。

誰もが一度は考えた事があるだろう「タイムトラベル」。

「宇宙検閲官仮説」

理論物理学者キップ・ソーンは、人間が問題なく通過できるためのワームホールの条件を真面目に考察して論文にしました。そして「ワームホールを支えておくには、負のエネルギーを用いなくてはならない。」と結論付けました。負のエネルギーとは、負の質量をもつ物質を指します。

量子論的には一瞬は存在しますが、現在の技術では、まとまった存在として考えるのは非現実的と言われています。  しかし、ソーンはこれを「エキゾチックな物質」と呼び、「将来の技術で可能になるならば」という言い方で話を進めました。

通常、非現実的な物質を仮定しては物理の議論は成立しないものになります。ソーンほどの大家が言いだしたので、負のエネルギーを用いた論文が解禁された感じになりました。

あるときソーンが学会で、ワームホールを用いた空間2点間の移動について話したところ、会場で誰かが「時間が異なる2点間でも移動は可能なのか」と質問しました。

時間と空間を区別しない相対性理論では当然の質問でした。はっと気づいたソーンは、ワームホールを用いて過去へタイムトラベルする方法についての論文を出します。

ソーンが考えたのは、ワームホールの一方の入り口を光速近くで動かすことによって時間の進み方を遅くし、元の場所と時間差が生じたときにワームホールを使って戻るという筋書きでした。



目次

理論物理学者キップ・ソーンとは?

キップ・ステファン・ソーン(Kip Stephen Thorne、1940年6月1日 – )はアメリカ合衆国の理論物理学者。ジョン・ホイーラーの弟子で重力の理論や、相対論的宇宙論の分野に貢献した。

重力理論、ブラックホール、宇宙論の歴史と理論を解説した一般向けの著書『ブラックホールと時空の歪み アインシュタインのとんでもない遺産』(原題:Black Holes and Time Warps: Einstein’s Outrageous Legacy)によって一般にも有名となり、映画『インターステラー』のエグゼクティブ・プロデューサーとなるなど、研究の傍らも最先端の科学知識の普及に努めていることで知られる。

2017年 「LIGO検出器への決定的な貢献と重力波の観測」の功績によりノーベル物理学賞受賞。

ワームホールとは?

ワームホール (wormhole) は、時空構造の位相幾何学として考えうる構造の一つで、時空のある一点から別の離れた一点へと直結する空間領域でトンネルのような抜け道である。

ワームホールが通過可能な構造であれば、そこを通ると光よりも速く時空を移動できることになる。ワームホールという名前は、リンゴの虫喰い穴に由来する。リンゴの表面のある一点から裏側に行くには円周の半分を移動する必要があるが、虫が中を掘り進むと短い距離の移動で済む、というものである。

ジョン・アーチボルト・ホイーラーが1957年に命名した。

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宇宙検閲官仮説とは?

アインシュタイン方程式の解には、特異点定理により一般に特異点が生じることが知られているが、それらの特異点の多くは事象の地平面の内側にあるので、外側の世界とは隔離され、物理法則を考える上では問題がない。しかし、電荷を持つブラックホール解や、ワイル解やトミマツ・サトウ解などで事象の地平面で囲まれない特異点が存在することが知られており、「裸の特異点」と呼ばれている。

裸の特異点が自然界に存在すると、その特異点より過去の事象は物理法則で予測不可能になってしまう。そこで、裸の特異点はあたかも何者かが検閲して禁ずるがごとく、何らかの物理法則で禁止されるであろう、という仮説が立てられるに至った。

1969年にロジャー・ペンローズが提唱した時点では、明確なステートメントとして与えたものではなかった。むしろ、明確なステートメントは何かを探すのが研究目的だったともいえる。

弱い宇宙検閲官仮説 (weak cosmic censorship hypothesis)「宇宙にはビッグバンの初期特異点以外の裸の特異点は存在しない」とする仮説。

強い宇宙検閲官仮説 (strong cosmic censorship hypothesis)「時空に存在・形成するいかなる特異点も事象の地平面に隠される」とする仮説。

宇宙検閲官仮説を認めるならば、ブラックホール唯一性定理 と ブラックホール脱毛定理 により、自然界に存在する定常ブラックホールは、カー・ニューマン解に限られる。

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「アインシュタインの宿題・重力波」を解いたキップ・ソーン

重力波はアインシュタインが残した「最後の宿題」と言われ、その答えを歴史に刻んだ物理学者に最高の栄誉が贈られた。 重力波は重い天体同士が合体するなどした際、その重力の影響で周囲の空間にゆがみが生じ、波紋のように遠くまで光速で伝わっていく現象

ソーンの研究は、地球上で観測された重力波の強さとその時間的な兆候”シグネチャー”の予測を扱ってきた。これらの「シグネチャー」は、ソーンが主導的に推進してきた複数機関の重力波実験であるLIGO (Laser Interferometer Gravitational Wave Observatory)に大きく関連している。

1984年には、2つ以上の「静的な」点間の揺らぎを識別して測定するLIGOプロジェクト(NSFが資金提供した史上最大のプロジェクト)を共同で立ち上げた。ソーンの研究はこれらの物体を解析するために必要な数学的手法を開発したことである。ソーンはLIGOの特徴について工学的な設計解析を行い、重力波を求めるためのデータ解析アルゴリズムについてアドバイスを行っている。

LIGOがターゲットとすべき重力波源の特定、LIGOビーム管内の散乱光を制御するためのバッフルの設計、Vladimir Braginsky(モスクワ、ロシア)研究グループとの共同研究により、先進重力波検出器のための量子非脱磁設計の考案、先進検出器で最も深刻な種類のノイズである熱弾性ノイズを低減する方法の考案など、LIGOの理論的なサポートを行っている。

カールトン・M・ケーブス(Carlton M. Caves)とともに、高調波振動子の量子非消耗測定に対する逆作用回避アプローチを発明した。

2016年2月11日、LIGO科学共同研究を代表する4人の物理学者からなるチームは、2015年9月に、13億光年離れた場所で2つのブラックホールが衝突しているサインを記録したと発表した。この記録された検出は、重力波の儚いさえずりを初めて直接観測したものであり、アインシュタインの一般相対性理論の重要な予言を確認した。

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映画「インターステラー」に出てくる数式は理論物理学者キップ・ソーンが監修

「ダークナイト」「インセプション」のクリストファー・ノーラン監督によるオリジナル作品。世界的な飢饉や地球環境の変化によって人類の滅亡が迫る近未来を舞台に、家族や人類の未来を守るため、未知の宇宙へと旅立っていく元エンジニアの男の姿を描く。主演は、「ダラス・バイヤーズクラブ」でアカデミー主演男優賞を受賞したマシュー・マコノヒー。共演にアン・ハサウェイ、ジェシカ・チャステイン、ノーラン作品常連のマイケル・ケインほか。「ダークナイト」や「インセプション」同様に、ノーラン監督の実弟ジョナサン・ノーランが脚本に参加。撮影は、これまでのノーラン作品を担当していたウォーリー・フィスターが自身の監督作「トランセンデンス」製作のため参加できず、代わりに「裏切りのサーカス」「her 世界でひとつの彼女」などを手がけて注目を集めているホイテ・バン・ホイテマが担当。2020年9月には、クリストファー・ノーラン監督の「TENET テネット」公開にあわせたノーラン監督作のリバイバル上映企画「ノーラン夏祭り」の第4弾としてIMAX版で上映。

2014年製作/169分/G/アメリカ
原題:Interstellar
配給:ワーナー・ブラザース映画

シン・ウルトラマンの物理学。最先端の「究極理論」を世界観にキップ・ソーンが監修

日本を代表するSF特撮ヒーロー「ウルトラマン」を、「シン・ゴジラ」の庵野秀明と樋口真嗣のタッグで新たに映画化。庵野が企画・脚本、樋口が監督を務め、世界観を現代社会に置き換えて再構築した。「禍威獣(カイジュウ)」と呼ばれる謎の巨大生物が次々と現れ、その存在が日常になった日本。通常兵器が通じない禍威獣に対応するため、政府はスペシャリストを集めて「禍威獣特設対策室専従班」=通称「禍特対(カトクタイ)」を設立。班長の田村君男、作戦立案担当官の神永新二ら禍特対のメンバーが日々任務にあたっていた。そんなある時、大気圏外から銀色の巨人が突如出現。巨人対策のため禍特対には新たに分析官の浅見弘子が配属され、神永とバディを組むことになる。主人公・神永新二を斎藤工、その相棒となる浅見弘子を長澤まさみが演じ、西島秀俊、有岡大貴(Hey! Say! JUMP)、早見あかり、田中哲司らが共演。劇中に登場するウルトラマンのデザインは、「ウルトラQ」「ウルトラマン」などの美術監督として同シリーズの世界観構築に多大な功績を残した成田亨が1983年に描いた絵画「真実と正義と美の化身」がコンセプトとなっている。

2022年製作/112分/G/日本
配給:東宝