テキサス大学オースティン校のKatherine Freese氏とMartin Wolfgang Winkler氏は、暗黒物質は普通の物質と共に誕生したのではなく、普通の物質とは別の “ビッグバン” で生成されたという仮説を提唱しました。暗黒物質と普通の物質がそれぞれ別のビッグバンで生成されたとすれば、相互作用に関する矛盾は解決します。Freese氏らは、この暗黒物質に関するビッグバンを「暗黒ビッグバン (Dark Big Bang)」と呼んでおり、区別するために従来のビッグバンを「熱いビッグバン (Hot Big Bang)」と呼んでいます。
ビッグバンは「2回」あった? 暗黒物質を生み出した「暗黒ビッグバン」が提唱される(sorae 宇宙へのポータルサイト) – Yahoo!ニュース
目次
暗黒物質を生み出した「暗黒ビッグバン」
暗黒ビッグバンはなぜ起こったのでしょうか?従来のビッグバン (熱いビッグバン) に対する考え方では、インフレーションの終了後に場が全て崩壊したと考えられていました。これに対して今回の仮説では、場の一部が熱いビッグバンの後にも崩壊せずに残り、それが後の時代における暗黒ビッグバンの原動力になった、と考えています。
しかし、暗黒ビッグバンに相当する現象は観測されていません。もしも暗黒ビッグバンが実際にあったとした場合、それは観測事実に矛盾しないタイミングだったはずです。Freese氏らは、暗黒ビッグバンのタイミングは宇宙誕生から約1か月後だったと推定しています。これは、1秒未満で様々なイベントが進行した熱いビッグバンと比較すれば、永遠と言えるほど長い期間の後に発生したことになります。
仮に暗黒ビッグバンが本当に起きていたとしても、それは電磁波で観測が不可能な、宇宙誕生から38万年後よりも前の時代の出来事です。それでは暗黒ビッグバンは観測不可能なのかというと、そうではありません。確かに、電磁波で観測する従来の望遠鏡では、暗黒ビッグバンを知ることは不可能です。しかし、暗黒ビッグバンでは大量の暗黒物質が生成されたことによる影響で、強い重力波が発生したと考えられます。もしもその重力波を直接観測することができれば、それは暗黒ビッグバンの観測的な証拠になるかもしれません。
ただし、そのような重力波があるとしても、その信号強度は非常に弱いため、実際に観測できるのはずっと先の話になると考えられます。そこでFreese氏らは、代わりにパルサーの連星の観測を提案しています。パルサーは非常に正確な周期で信号を発していますが、重力波の影響によりパルサーが直接揺さぶられることで、この信号にズレが生じると考えられます。そのような現象の観測例が増えれば、暗黒ビッグバンの証拠が見つかるかもしれません。
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ビッグバンとは?
ビッグバン(Big Bang)とは、宇宙は非常に高温高密度の状態から始まり、それが大きく膨張することによって低温低密度になっていったとする膨張宇宙論(ビッグバン理論)における、宇宙開始時の爆発的膨張。インフレーション理論によれば、時空の指数関数的急膨張(インフレーション)後に相転移により生まれた超高温高密度のエネルギーの塊がビッグバン膨張の開始になる。その時刻は今から138.2億年(13.82 × 109年)前と計算されている。
遠方の銀河がハッブル=ルメートルの法則に従って遠ざかっているという観測事実を一般相対性理論を適用して解釈すれば、宇宙が膨張しているという結論が得られる。宇宙膨張を過去へと外挿すれば、宇宙の初期には全ての物質とエネルギーが一カ所に集まる高温度・高密度状態にあったことになる。
この高温・高密度の状態よりさらに以前については、一般相対性理論によれば重力的特異点になるが、物理学者たちの間でこの時点の宇宙に何が起きたかについては広く合意されているモデルはない。
20世紀前半までは、天文学者の間でも「宇宙は不変で定常的」という考え方が支配的だった。1948年にジョージ・ガモフは高温高密度の宇宙がかつて存在していたことの痕跡として宇宙マイクロ波背景放射 (CMB) が存在することを主張、その温度を5Kと推定した。
このCMBが1964年になって発見されたことにより、対立仮説(対立理論)であった定常宇宙論の説得力が急速に衰えた。その後もビッグバン理論を高い精度で支持する観測結果が得られるようになり、膨張宇宙論が多数派を占めるようになった。
“Big Bang” は英語で「大きなバン!(という音)」を意味する。
Wikipedia
宇宙は「暗黒のビッグバン」で始まったかもしれない
ビッグバンは単独ではなかったかもしれない。宇宙のすべての粒子と放射線の出現は、ダークマター粒子で私たちの宇宙をあふれさせた別のビッグバンと合わせて起きたのかも知れないのだ。そして、それを検出することが可能かも知れない。
標準的な宇宙論では、初期の宇宙は非常にエキゾチックな場所であるとされている。この宇宙で最も重要なことは、ビッグバン後の非常に早い時期に起こったインフレーションであり、この現象によって宇宙は非常に急速に膨張した。インフレーションが終わると、その原動力となったエキゾチックな量子場は崩壊し、今日残っている粒子や放射線の洪水に姿を変えた。
宇宙が誕生して20分も経っていない頃、ビッグバン核合成と呼ばれる方法で、その粒子が最初の陽子と中性子へと組み合わされ始めた。ビッグバン核合成は、宇宙空間に存在する水素やヘリウムの量を正確に予測する計算であり、現代の宇宙論の柱となっている。
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【▲ 図2: 従来の熱いビッグバン宇宙論 (左) と、今回提唱された暗黒ビッグバン宇宙論 (右) 。熱いビッグバン宇宙論では、ビッグバンは熱いビッグバン (Hot Big Bang) の1回しか起こらず、普通の物質と暗黒物質は同時に生成したと考えられる。これに対して暗黒ビッグバン宇宙論では、熱いビッグバンの後に暗黒ビッグバン (Dark Big Bang) が発生し、この時に暗黒物質が生成したと考えられる。 (Image Credit: Freese&Winkler)】
図2: 従来の熱いビッグバン宇宙論 (左) と、今回提唱された暗黒ビッグバン宇宙論 (右) 。熱いビッグバン宇宙論では、ビッグバンは熱いビッグバン (Hot Big Bang) の1回しか起こらず、普通の物質と暗黒物質は同時に生成したと考えられる。これに対して暗黒ビッグバン宇宙論では、熱いビッグバンの後に暗黒ビッグバン (Dark Big Bang) が発生し、この時に暗黒物質が生成したと考えられる。 | sorae 宇宙へのポータルサイト