「地球平面説」が笑いごとではない?

地球の丸みを確かめようとしたものの証拠は見つからず、それ以来、地球が平らで静止しているとの説を熱心に信じている方がいる。



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「地球平面説」

古代の多くの文化で地球平面説がとられており、そのなかには古典期に入るまでのギリシア、ヘレニズム期に入るまでの青銅器時代~鉄器時代の近東、グプタ朝期に入るまでのインド、17世紀に入るまでの中国がある。地球平面説の典型的には、ネイティブ・アメリカンの文化でも受容されており、逆さにした鉢のような形状の天蓋がかぶさった平面状の大地という宇宙論は、科学以前の社会では一般的である。

地球球体説というパラダイムはピュタゴラス(紀元前6世紀)によって生み出されてギリシア天文学において発展したが、ソクラテス以前の哲学者はほとんどが地球平面説を維持していた。紀元前330年頃にアリストテレスが経験的見地から地球球体説を採用し、それ以降ヘレニズム時代以降まで地球球体説が徐々に広がり始めた。

コロンブスの時代のヨーロッパでは教養人も地球平面説を信じており、コロンブスの世界一周航海によってそれが反証された、という近代に生まれた誤解は『地球平面説神話』と呼ばれてきた。1945年に(イギリスの)歴史学協会で作成された『歴史に関するよくある誤り』のリストの20項目中2番目にこの誤解が掲載された。

地球平面説 – Wikipedia

世界に広がる「地球平面説」 その背景にあるものは?

 「地球平面論者(フラットアーサー)なんかになりたくない」――。

デビッド・ワイスさんは、うんざりした声で自身の「目覚め」を振り返る。「朝起きて全員にばかにされるなんて嫌だろ?」 ワイスさんが付き合いを優先させるのは自分の人生を変えた地球平面説への信念を共有するコミュニティーだ。そして、そのコミュニティーは大きな広がりを見せている。

ワイスさんは先ごろ、テキサス州ダラス郊外のホテルで開かれた「第3回地球平面国際会議」に参加した。主催者によると、参加者は約600人に上ったという。これ以前にはノースカロライナ州ローリーやコロラド州デンバーでも会議が開かれたほか、近年はブラジルや英国、イタリアでも会議が開催されている。会議のスケジュールは企業の会合と似たようなものだが、明らかなひねりも加えられている。登壇者は「宇宙はフェイク」などの題名でプレゼンを披露。地球平面論に関する年間ベスト動画賞も授与された。

「私たちは皆、インターネット上でやり取りしてきたが、ここなら一堂に会して握手や抱擁を交わすことができる」とワイスさん。

「力を合わせ、新しい友人を作ることができる。なぜなら、ほら、昔の友人は・・・私たちは多くの友人を失ったから」

晴れた日であれば、地球の丸みは航空機の窓から確認できる。しかし驚くべきことに、ダラスに集まった数百人は、地球平面説を唱える運動のごく一部に過ぎない。人々はこの丸い星のあらゆる場所で科学を否定し、地球は平らだという説を広めているのだ。

CNN.co.jp : 世界に広がる「地球平面説」 その背景にあるものは?

「地球平面説」が笑いごとではない理由

極め付きは、「地球は平面だ」と主張する「フラットアース論者」が増えていることだろう。

このように科学を軽視あるいは否定する風潮に危機感を覚えた科学者らが、2年前、世界600都市で「科学のための行進」を実施した。私の地元ボストンのデモでは、「冷静に批判的に考えろ」「科学がなければツイッターもなかった」「深刻な問題だからオタクも来た」など、ユーモアを交えたプラカードが数多く見られた。

実際、科学者が研究室から路上に出なければ、と思うのはよほどのことだ。もはや科学の世界の問題は、学術的な領域にとどまらなくなった。私たち科学者自身が、もっと科学を守るための活動に関与していかないと、科学は否定論者たちによって、いいように葬られてしまいかねない。

とはいえ、この「ポスト真実」の時代に、科学や証拠を否定する人たちをどうすれば説得できるかは、まだよく分かっていない。科学者は証拠を示すことで自説を唱えるが、そのデータが受け入れられなかったり、整合性を疑われたりすると、「もう結構」と腹を立て、それ以上相手と関わるのをやめてしまうことが多い。

その気持ちは分からなくもないが、科学否定論者を「論理的な話が通じない人たち」と切り捨ててしまうのは危険だと、私は思う。もっとまずいのは、「地球温暖化について100%の意見の一致はあるのか」といった否定論者の追及に、証拠を振りかざして反論しようとすることだ。そんな対応は、「どんな仮説も、証拠がない限り机上の空論にすぎない」という、最も有害な考え方を勢いづかせるだけだ。

むしろ科学者は、証拠や確実性や論理を語るのをやめて、科学的な価値観の説明をするべきだ。科学の最大の特徴は、方法ではなく態度にある。つまり、証拠を重視して、新たな証拠が見つかったら自説を自主的に修正する態度だ。その姿勢こそが、科学者と科学否定論者の最大の違いと言っていい。

18年11月、私はコロラド州デンバーで開かれた「フラットアース国際会議(FEIC)」に参加して、このセオリーを自ら実践してみることにした。FEICは、地球は平面だと信じる人たちが年に1度集まるド派手なイベントだ。講演者がマルチメディアを駆使して、「私たちはグローバリスト(地球は丸いと主張する人々)に何千年もだまされてきた」と言うと、約600人の聴衆から拍手喝采が起こった。

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「2年前まで地球が平面だとは考えていなかったが……」

米テキサス工科大学のアシュリー・ランドラム准教授は、2017年11月に米ノースカロライナ州で開催された「第一回地球平面国際会議」と2018年11月に米コロラド州で開催された「第二回地球平面国際会議」で参加者30名にインタビュー調査を実施し、2019年2月17日、アメリカ科学振興協会(AAAS)の年次総会でその調査結果を発表した。

英紙ガーディアンの報道によると、インタビュー対象者のうち29名は「2年前まで地球が平面だとは考えていなかったが、ユーチューブで地球平面説を唱える動画を閲覧して考えが変わった」と回答。残りの1名はユーチューブで動画を見た娘夫婦の話に影響を受けたという。

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