日本も新型の火星探査機を打ち上げる!JAXAの火星探査計画(MMX)とは?

15年周期で地球に大接近する火星。最近では火星に水があるとか? 無いとか? 話題になっています。そんな中、日本でも火星からサンプルを採取して地球に帰還することを想定している火星衛星探査計画(MMX : Martian Moons eXploration)の研究開発が行われています。2020年代前半の打ち上げ予定。

◆「日本も火星探査を計画中です!」JAXA 宇宙科学研究所 藤本正樹さん

── 日本は火星探査を計画していますか?

JAXAでは「火星衛星探査計画(MMX)」を進めています。これは火星の衛星に着陸して、サンプルを回収して地球に帰還する計画で、「はやぶさ」「はやぶさ2」の経験を活かせば達成できるだろうと思っています。

ただ、「はやぶさ」「はやぶさ2」は小惑星だったので重力が非常に弱く、表面に触った瞬間にサンプルを採取し、エンジンを噴かしてすぐに上昇することが可能でした。しかし、火星の衛星はそこまで小さくないので、ちゃんと着陸する必要があります。現在は2024年の打ち上げを計画していて、2029年に地球に帰ってくる計画です。

── このミッションの目的は何なんでしょう?

太陽系が誕生したとき、太陽の近くでは温度が高いため水は水蒸気になり、ある距離から温度が下がって氷になりました。その境目を「スノーライン」と呼びます。石ころが集まって惑星になるとき、水蒸気は取り込めませんが、氷なら石ころと同じなので一緒に集まります。それで、スノーラインの内側と外側で惑星の組成が大きく変わるんです。

そのスノーラインのスレスレ内側にいる火星の衛星は、スノーラインの外から降ってきた小惑星がそのまま捕まったり、火星に衝突して生まれたのではないかと考えられています。そこで、MMXでは火星の衛星がどうやってできたのかを探り、それによってスノーラインの外側から内側に降ってきた小惑星の様子を明らかにしようとしています。

従来、惑星は「その場所にあった物質が静かに集まって生まれた」と考えられてきました。しかし、現在は「太陽からの距離を変えながら大きく物が動いていた」と考えられています。そのおかげで地球に水がもたらされ、生命が誕生したのでは……そんな大変動を明らかにするのがMMXの目的です。

── 日本以外の国の火星探査はどうなっていますか?

将来的には世界で協力して有人探査を目指していますが、現在はNASAが火星の表面で「キュリオシティ」というローバーを走らせて探査しているところです。おもしろい石を見つけたらドリルで穴をあけて匂いを分析したりしているのですが、先日、30億年以上前にできた泥岩の中に複雑な有機物を発見して話題になりました。火星の環境がまだ生命が誕生してもおかしくなかった時代に有機物があったということは……と、我々もいろいろ想像が膨らむ発見です。

引用元「JAXAの「火星衛星探査計画」、そのミッションの目的は?(TOKYO FM+) – Yahoo!ニュース



目次

火星の地下に液体の湖を発見

イタリアの科学者チームが、欧州宇宙機関(ESA)の無人探査機「マーズ・エクスプレス」が2012年5月から15年12月に収集したレーダー信号のデータを分析したところ、火星の南極地域にある氷床の下に大きな塩水湖が存在することが分かったと発表した。研究結果は、科学誌サイエンスに掲載された。

直径約20キロの湖は丸みを帯びた三角形で、まとまって安定した液体としては火星最初の発見となる。

水は生命誕生に不可欠な存在とされているが、今回見つかった湖に生命体が存在するかが確認できるまでには何年もかかる見込みで、次のミッションはおそらく、氷床を掘って湖水の標本を採取することになるとみられている。

レーダーは、火星の地表や氷床を透過するもので、地球の南極とグリーンランドの氷河下にある湖に酷似した反射が確認された。

イタリア国立宇宙物理学研究所のロベルト・オロセイ氏は、湖水の温度は氷点下だが、高い塩分濃度などの要因から液体を保っているもようで、水温はマイナス10からマイナス70度と推定した。

火星には乾燥した湖底や水峡の痕跡が見られ、はるか以前にはより温暖湿潤で、大量の水が存在していたとみられている。水の活動があったことを示す痕跡が地表に存在することから、現在も水が存在していることを示す兆候は見つかっていた。

引用元「火星の地下に液体の湖を発見、生命探査にはなお時間=研究(ロイター) – Yahoo!ニュース

日本の火星衛星探査計画(MMX)

火星衛星の起源や火星圏の進化の過程を明らかにすることを目的とした火星探査計画。火星の2つの衛星フォボスとダイモスを観測し、うち1つからサンプルを採取して地球に帰還することを想定している。2020年代前半の打ち上げを目指し開発を進めている。

火星衛星探査計画(MMX : Martian Moons eXploration)では、2020年代前半の探査機打上げを目指し、研究開発が行われています。
火星は、フォボスとダイモスと呼ばれる2つの衛星を持っています。火星衛星の擬周回軌道(QSO: Quasi Satellite Orbit)に入り、火星衛星観測・サンプル採取を行います。観測と採取を終えた探査機は、サンプルを携えて地球に帰還するというシナリオを描き、検討を行っています。

この研究開発によって、火星圏への往還技術や天体表面上での高度なサンプリング技術、さらには新探査地上局を使った最適な通信技術と、これからの惑星や衛星探査に必要とされる技術の向上も期待されます。

また、火星衛星の起源や火星圏(火星、フォボス、ダイモス)の進化の過程を明らかにし、太陽系の惑星形成の謎を解く鍵を得ることができるかもしれません。

引用元「火星衛星探査計画(MMX) | 科学衛星・探査機 | 宇宙科学研究所

火星を飛行探査する火星探査航空機

火星の飛行探査

太陽系惑星の中で地球の隣に位置し、かつて生命が存在したのではないかと考えられている火星は私たちを強く魅了する。これまでの探査によって、エベレストの約3倍の標高を誇るオリンポス山や長さが約4,000kmにもわたるマリネリス峡谷など、起伏に富んだ火星のダイナミックな地形や、地球と同様にプレートテクトニクスの可能性を示唆する残留磁場分布など、火星の様々な様相が明らかになってきた。これらの成果はNASAやESAが中心となって送り込んできた人工衛星や着陸探査機によるものだ。筆者らはこのような人工衛星や着陸探査機ではできない新しい探査手法として、火星探査航空機を使った上空からの飛行探査を構想している。航空機探査が可能となれば、探査ローバーのように火星の複雑な地形に左右されることなく、水平・垂直方向に自由に探査することができる。また人工衛星では撮影が困難な場所、例えば峡谷の断層面の画像撮影などができれば、火星内部の地層の歴史を知る手がかりとなり、惑星地質学的意義は大きい。さらに目標に近づいて低・中高度からデータ取得が可能なことから、人工衛星から得られた残留磁場分布よりも高解像度なデータ取得が可能となり、プレートテクトニクスの仮説を補強する重要なデータとなり得る。このように広い探査領域を確保しつつ、より詳細なデータ取得が可能となることから、日本独自のサイエンスミッションの確立とその成果に期待が寄せられる。本記事では、世界に先駆けて火星の飛行探査に挑戦する火星探査航空機の開発の一端として、主翼や機体全体の空力研究について紹介する。

直面する空力課題

幸いにも、火星の重力加速度は地球の約3分の1程度となるため、火星大気飛行で必要な揚力も約3分の1でよい。これだけ見れば、火星で飛行機を飛ばすことはさほど難しくないように思われる。しかし、話はそう単純ではない。火星で航空機を飛ばすことは一体何が難しいのか。流体力学的に最も強く影響するのは火星の大気密度である。火星の大気密度は地球とは大きく異なり、地球の約100分の1程度と非常に希薄となる。このような希薄環境では得られる揚力も100分の1程度と圧倒的に小さくなる。このため、わずかに存在するこの希薄気体の力を利用して飛行を成立させるだけの揚力を得なければならず、航空機を飛ばすには過酷な環境と言える。さらに様々な制約条件が加わる。例えば、火星探査航空機は画像撮影などの探査を目的としているため、揚力を稼ぐために過度に飛行速度を上げることができない。また、火星までは直径1m程度のカプセルに翼を折り畳んで収納するため、主翼面積もほとんど限られている。このようなことから、飛行を成立させる揚力確保には、機体の軽量化に加えて翼自体の空力性能を大幅に向上させることが必須の課題となる。

低い大気密度は翼周りの流れの物理にも影響し、結果的に空力性能にも影響する。と言うのも、翼周りの気体の流れは密度や温度、ガス種によって変化するため、地球上の飛行で空力性能が良いものが火星でも性能が良いわけではない。むしろその逆とも言える。例えば、火星飛行の条件下では、上下対称な流線型の翼よりもただの平板や板を少し曲げた円弧型の単純な形の翼の方が何倍も高い揚力が発生するなど、火星では民間航空機用の翼設計では予測しきれない独特な空力特性を示す。こう言ったことから、火星大気飛行条件で翼の空力性能を正確に把握し、なおかつ高い空力性能を持つ主翼の設計開発が要求される。

火星での飛行を地上で模擬する火星大気風洞

筆者は東北大学大学院在籍時に火星での飛行を地上で模擬して、翼の空力性能を検証できる実験装置、「火星大気風洞」(図1)の開発に取り組んだ。風洞試験では流れの相似法則を利用して幾何学的な相似(物体形状や姿勢)が力学的にも相似になるようレイノルズ数(脚注1参照)(Re数)とマッハ数(M数)を実際の飛行条件に合わせる。ところが火星では、Re数が10⁴オーダー(民間航空機のRe数は10⁷~10⁸程度)と非常に低くなり、さらに火星での音速が低いことからM数も上がりやすいため、飛行速度によっては遷音速に近い高亜音速領域(M = 0.7程度)となる。したがってこのような低Re数の高亜音速領域は、地球上の航空機設計でほとんど直面することのない、非常に特殊な気流領域である。このため、火星での飛行条件のRe数とM数を同時に満たし、空力検証ができる風洞自体が世界的に存在せず、空力特性の詳細は未知の気流領域であった。

この火星大気風洞は風洞自体を真空チャンバーの中に入れる大胆な構造をとり、チャンバー内部で火星と同じような減圧環境を作って気流を発生させる、というコンセプトである。しかし、このような構成では設計当初、「減圧環境でいかに高速気流を発生させるか」という課題にぶつかった。一般的に風洞はそのほとんどがファン駆動であるが、これだと減圧環境では駆動効率が著しく低下するため、目標とする高速気流を発生できない。そこで、種々の方式を検討した結果、ポンプや一部のエンジンなどで使われている高圧噴射器に着目し、より大きな投入エネルギーで高い誘起流速が期待できる超音速エジェクターを駆動装置として採用した。これは測定部の下流から噴射される高圧ガスによって上流側の測定部に流れを誘起する駆動システムであるが、世界的にも風洞の駆動装置としてエジェクターが使用された実例はほとんどなかった。しかし、普通ではない環境での飛行に挑戦しようとしているので、常識にとらわれない発想のもと、このエジェクターを採用することにした。入念な気流の検定試験や地道にオペレーションシステムを構築することによって、ついに目標とする気流領域をカバーできる風洞を開発することができた。

飛行成立に向けた高性能主翼開発

2011年当時、ISAS/JAXAへと研究の場を移した筆者は火星探査航空機を検討するワーキンググループ(WG)に所属し、飛行を成立させる高性能な主翼開発に向けて、その手がかりを探っていた。実はRe数だけであれば、地球上でも火星での飛行と同等の低Re数領域で飛行するものがある。その特徴は物体のスケールが小さく、またゆっくりと飛行するものであり、昆虫や模型飛行機などがそれに相当する。昆虫などの生物の飛行が火星航空機の飛行に近い物理である点は学術的にも大変興味深いが、生物の飛翔では羽ばたき運動が関連して現象が複雑となるため、検討段階では航空機設計への直接的な適用は難しいと判断された。そこで固定翼を使うハンドランチグライダー(HLG)に着目した。特にHLGのフリーフライトで当時の世界記録保持者であった石井満氏が制作し、愛好家の間でも高性能として知られていた”石井翼型”(図2)に狙いを定めた。石井翼型は主流方向の長さ(翼弦長)が1mの場合、厚みは最大でもわずか7cm程度と非常に薄いのが特徴である。実用的には構造強度が確保できる限界に近い厚みと言える。また下面形状も独特で、特に翼の後端部分では、上面にぐっと反り返った形状となっている。この翼型は一体どの程度性能が良いのか、またなぜこの形状で性能が良いか、その物理的なメカニズムを明らかにすることで火星探査航空機の主翼設計の切り口にしようとした。

引用元「火星を飛行探査する火星探査航空機 | 宇宙科学研究所